5.24.2006

ночь/夜

お祭りのようだった 世の中が
ゆっくりと おちついてきた
あのころのこと

のちに 夕凪の時代と呼ばれる てろてろの時間
つかの間のひととき

ご案内しましょう
夜が来る前に

まだあったかい コンクリートに すわって

(芦奈野ひとし『ヨコハマ買い出し紀行』講談社アフタヌーン 14巻 150、151頁)

『ヨコハマ買い出し紀行』が終わってしまいました。大好きな作品だけにショックです…
 最後まで静かな作品でした。最後を飾る14巻の世界は13巻と10年ほどの時間差から始まり、一話一話も数ヶ月から10年ほどの開きをもって、訥々と語られてゆきます。13巻の主題「容赦のない時の流れ」、「死」はこの巻でも底流を成し(132話)、特に死はよりはっきりと、アルファに、また読者に突きつけられます(134話、最終話)。同時にこの作品全体の主題「生」も、暖かな抱擁が千万の言葉よりも多くを語ることもあるように、静かながらもこれまでになく強く自らを主張します(136話、138話)。
 作品全体は終わりへとゆったり流れながら、昔の旋律が再び顔を覗かせます。かつての「夕凪の時代」の語り部として、アルファはこんな言葉で作品を締めくくります。

人の夜が
やすらかな時代で ありますように

 「人の夜」。これは人類が死滅する寒い夜ではなく、「お祭りのように」盛り上がり、無理を重ねて来た人類が新たな朝に備えて休む時を指しているのではないかと感じました。芦奈野氏はこの作品を通じて、ひとつの未来への地図を描き出したのかもしれません。

3 件のコメント:

人力のあつ さんのコメント...

なるほど。これのことか(笑)
HP見たらさわやかであり切ない音楽が流れてきました。
静かな作品と言うだけあってHPの音楽に合うような漫画なんでしょうね。
私もチェックしてみよ

アルティメット鈴木 さんのコメント...

本当に大好きな作品だっただけに、おわってしまったのはちょっとショックでした。
まだまだまだまだ見て行きたい世界だっただけに、残念です。
ただ、おわり方に関しては同感です。
この終わり方しかないでしょうね。

また最初から読み返してみようかなって思います。

コーシカ さんのコメント...

あつさん、アルさん、コメントありがとうございます。最近お返事が滞ってしまっていること、ご無礼をお詫びいたします。拙いブログですがこれからもどうぞよろしくお願いをいたします。

>あつさん
>私もチェックしてみよ
 是非是非。夏の木陰のような涼しげな作品です。あつさんもお気に入りますよ。

>アルさん
>また最初から読み返してみようかなって思います。
 特に14巻はそれまでの話とのつながりが強いと感じましたね。終わり方にさほど違和感を感じなかったのも、作者の頭の中ではしっかりと世界が築かれていたからかもしれませんね。