その第34回に、常連のチジクピジクさんが実に興味をそそるコメントを投稿されました
(以下が引用)
起点を表すロシア語の前置詞「от」に相当するトルコ語の後置詞「dan」でも受け身の動作主を示せます。
また、日本語の格助詞「から」も同様に示せるようです。
http://www2.ninjal.ac.jp/takoni/DGG/04_voisu.pdf
本題から逸れますが、名詞が所有形容詞化する「-ный」や「-ин」も
http://www2.ninjal.ac.jp/takoni/DGG/04_voisu.pdf
本題から逸れますが、名詞が所有形容詞化する「-ный」や「-ин」も
響きや位置がトルコ語の属格の後置詞「(n)in」や日本語の格助詞「の」に似ているなと昔から思っていました。
ロシア語と同じ印欧語族の英語の前置詞「from」は受け身の動作主を示せない?と思うので、
ロシア語と同じ印欧語族の英語の前置詞「from」は受け身の動作主を示せない?と思うので、
ロシア語はアルタイ語族の影響を受けたのでは勝手に想像しています。
(引用おわり)
おぉ~
面白そうなので調べてみました。
結論:
あるいは英独西各国語とも、大元は英語で言うofだけだったのが
意味が広すぎるので、from、aus(独)、desde(西)をのれん分けして場所を受け持ってもらったり
for、por(西)にしたりと、
別な語を使って正確を期すように代わっていったのかもしれませんね。
概要:
1. 「…から」と訳せる表現
2. 受身文の比較~英露独西
3. 原因の表現の比較
1. 「…から」と訳せる表現
結論:
露独西蒙をざっと見渡した限り
奪格ないしそれに近い意味の前置詞で動作主や原因を示す仕方に
ぼんやりとした共通の発想が見られそうです。
ぼんやりとした共通の発想が見られそうです。
あるいは英独西各国語とも、大元は英語で言うofだけだったのが
意味が広すぎるので、from、aus(独)、desde(西)をのれん分けして場所を受け持ってもらったり
for、por(西)にしたりと、
別な語を使って正確を期すように代わっていったのかもしれませんね。
概要:
1. 「…から」と訳せる表現
2. 受身文の比較~英露独西
3. 原因の表現の比較
1. 「…から」と訳せる表現
英 of, from(出所の意味が強そうです) など
露 от из-за など
独 von, aus(これは出身地などを言う時に使います) など
西 de, desde(場所を表す語との例が多いと感じます) など
蒙 –аас
2. 受身文の比較~英露独西
・英語の場合
be + 過去分詞 (+ by)
動作主を明示する場合にby(…の傍で)を使いますが、これは
動作主を明示する場合にby(…の傍で)を使いますが、これは
性質や所在、状態を指すbe + 過去分詞(受身の形容詞)に
by=過去分詞の状態を作り出す付帯状況(…の傍にいるので過去分詞の状態になる)
という組み合わせだからです。
という組み合わせだからです。
・ロシア語の場合
被動形動詞過去を使う場合は造格=творительный падеж=行為を創る格
を使って受身文における動作主を表します。
不定人称文といって、3人称複数を使って動作主を隠す方法もあります。
9月13日にさとう好明さんよりコメントを頂戴しました:
和文露訳指南第34回で書いたように、от + 生格が、造格とともに受け身で動作主となれると書いてあるのは、
指摘ありがとうございます。誤解の無いよう全面的に書き直しました。
・ドイツ語の場合
ドイツ語の受身文は
werden + (von または durch 3格) + 過去分詞 ですから
ドイツ語もvonで受動文の動作主を表します:英語で言うofとfromに跨る意味の広い語です。
werden + (von または durch 3格) + 過去分詞 ですから
ドイツ語もvonで受動文の動作主を表します:英語で言うofとfromに跨る意味の広い語です。
Die Prinzessin wird vom König sehr geliebt.
王女は王様にとても愛されています。
Die Tür ist geöffnet. 扉が開けられています。
(信岡資生『イラストでわかるドイツ語文法+トレーニングブック』ナツメ社、2011年、202、205頁)
Von wem wurden die Blumen geschenkt? この花はだれからいただいたのですか。
(『マイスター独和辞典』大修館書店、1998年、von 7)
durchを使うのは原因や手段などの場合のようです:英語で言うthroughですね。
Die Stadt wurde durch ein Erdbeben zerstört. その都市は地震で破壊されました。
Die Stadt wurde durch ein Erdbeben zerstört. その都市は地震で破壊されました。
(信岡、前掲書、202頁)
また状態受動といって、英語で言うbeを使う方法もあります
sein + 過去分詞
Die Tür wird geöffnet. 扉が開けられます。
(信岡、前掲書、205頁)
英語はforを原因や理由の意味で使えますが
ドイツ語のfürについてはそうした用法を確認できませんでした。
・スペイン語の場合
また状態受動といって、英語で言うbeを使う方法もあります
sein + 過去分詞
Die Tür wird geöffnet. 扉が開けられます。
(信岡、前掲書、205頁)
英語はforを原因や理由の意味で使えますが
ドイツ語のfürについてはそうした用法を確認できませんでした。
・スペイン語の場合
スペイン語の受身文は
ser + 過去分詞 (+ por) :英語で言うとbe + 過去分詞 + for
です。
La puerta fue abierta. ドアが開けられた。
(福嶌教隆『ニューエクスプレス スペイン語』白水社、2007年、110頁)
estarを用いると状態を表せるようです:英語だとbeの守備範囲ですが状態や所在を表すのに使います。
estar + 過去分詞 (+ por)
La puerta estuvo abierta. ドアは開けられていた。
(福嶌、前掲書、110頁)
3. 原因の表現の比較
ser + 過去分詞 (+ por) :英語で言うとbe + 過去分詞 + for
です。
La puerta fue abierta. ドアが開けられた。
(福嶌教隆『ニューエクスプレス スペイン語』白水社、2007年、110頁)
estarを用いると状態を表せるようです:英語だとbeの守備範囲ですが状態や所在を表すのに使います。
estar + 過去分詞 (+ por)
La puerta estuvo abierta. ドアは開けられていた。
(福嶌、前掲書、110頁)
3. 原因の表現の比較
・英語の場合
原因を表すのにforやfrom、throughを使えます。
His cheeks were red from the cold. ほおは寒さで赤くなっていた。
(『プログレッシブ英和中辞典』小学館、2003年、from 9)
I cannot sleep for hunger. 空腹で眠れない
There's no excuse if you failed through lack of effort. 努力不足で失敗したのなら言い訳はなしだ。
(『Eゲイト英和辞典』ベネッセコーポレーション、for 16; through 7)
・ロシア語の場合
原因を表すのにот кого-чегоやиз-за кого-чегоを使います。こちらは奪格的発想かな。
Me muero de sueño. 眠くて死にそうだ。
原因を表すのにforやfrom、throughを使えます。
His cheeks were red from the cold. ほおは寒さで赤くなっていた。
(『プログレッシブ英和中辞典』小学館、2003年、from 9)
I cannot sleep for hunger. 空腹で眠れない
There's no excuse if you failed through lack of effort. 努力不足で失敗したのなら言い訳はなしだ。
(『Eゲイト英和辞典』ベネッセコーポレーション、for 16; through 7)
・ロシア語の場合
原因を表すのにот кого-чегоやиз-за кого-чегоを使います。こちらは奪格的発想かな。
От жары в комнате ей стало плохо. 部屋の中が暑くて彼女は具合が悪くなった。
Растения погибли из-за недостатка воды. 植物が水不足で枯れてしまった。
(『露和辞典』研究社、1988年、от 5; из-за 4)
9月14日追記:
с чего も使えるようです。これも「…から」と訳せる言い方=奪格的発想かも。
вскрикнуть с испуга. びっくりして悲鳴を上げる
сделать что со зла. しゃくにさわって…をしてしまう
умереть с голоду. 餓死する
(『露和辞典』研究社、1988年、c I-12a)
・スペイン語の場合
スペイン語のdeは出自、原因、部分を表すのに使えます。9月14日追記:
с чего も使えるようです。これも「…から」と訳せる言い方=奪格的発想かも。
вскрикнуть с испуга. びっくりして悲鳴を上げる
сделать что со зла. しゃくにさわって…をしてしまう
умереть с голоду. 餓死する
(『露和辞典』研究社、1988年、c I-12a)
・スペイン語の場合
Me muero de sueño. 眠くて死にそうだ。
(『西和中辞典』小学館、2007年、de 2-6)
porが理由を指す時に使えるのも、英語におけるforの用法と似ています。
Nadie la quiere por su mal carácter. 彼女は性格が悪いので誰からも好かれていない。
porが理由を指す時に使えるのも、英語におけるforの用法と似ています。
Nadie la quiere por su mal carácter. 彼女は性格が悪いので誰からも好かれていない。
(『西和中辞典』小学館、2007年、por 1-2)
英語のofやドイツ語のvonとよく似ていますね。
英語のofやドイツ語のvonとよく似ていますね。
フランス語のdeの守備範囲も近いように感じます。
・モンゴル語の場合
・モンゴル語の場合
トルコ語の親戚筋のモンゴル語も奪格語尾で動作主を示せます。
Би энэ гуталыг түүнээс авсан. 私はこの靴を彼から取った(=もらった、買った)。
Би энэ гуталыг түүнээс авсан. 私はこの靴を彼から取った(=もらった、買った)。
(金岡秀郎『リアル・モンゴル語』明石書店、2009年、88頁)
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