7.01.2006

ロシア式ビジネス狂騒曲 ─ アヴォーシ=何とかなるかも

 え〜ようやく読み終わりました。さとう好明さんの新著『ロシア式ビジネス狂騒曲—アヴォーシ=何とかなるかも』について僭越ながら感想を書かせて頂きます。

 この本はさとうさんによるロシア素描です。日本に居ながらにしてロシアの土のにおいを感じられるような本を書くぞ!!…とまで勢い込まれたかはともかく、35年にわたってソ連・ロシアビジネスに携わっていらしたご経験を基に、時に苦笑いをしながら、楽しんで書き綴ってゆかれた跡が随所に窺えます。描く気満々の画家のスケッチブックを見ているような愉快な気分になってきます。
 ロシアビジネスをちらとでも考えていらっしゃる方は是非お読みになるよう強くお勧めします(もちろんロシア語通訳になろうなんて人は必読です)。最悪、2章と5章をつまみ読みするだけでもためになります。真剣にロシアとの取引をお考えの方はランポポーに相談のメールを出しましょう。あれだけの経験をお持ちの方に、そしてそれを惜しげもなく公開して下さる方に相談しない手はありません。
 ビジネスの章も含め、全般にロシア人気質についての描写がほとんどを占めていますから様々な読者にとって興味深い内容となっています。個人的には、警官とのやりとり、経済展望の大枠の掴み方などがとても勉強になりました。「若者のみならず特にロシアでは人と違うことをする人に対しては称賛ではなく、猜疑心を持って迎えることが多々ある」(52頁)。このくだりは驚きと共に読みました。ロシアはなんでも受け入れて”ロシアにしてしまう”というイメージがあったので意外でした。ロシア人と日本人、違うようで似ている所が結構あるように思えます。
 『アヴォーシ』は意欲作ですが惜しい点もあります。ひとつは参考文献や読書案内が挙げられていないことです。内容から推して参考文献はほとんどロシア語のものだろうとは思います。しかしロシア語の読めない読者がさらにロシアについての知識を広げられるよう、例えば山川のロシア史など日本語の関連資料を提示してあるともっと良かったと感じます。あとは本当に初心者が、例えばロシアの首都ってどこだっけ?くらいの人だと読んでもわからないところが多いような気がします(もっともこれはお互い様ですが)。ロシアのことはあまり知らんなあ、という方は『地球の歩き方』の巻末資料などに目を通してから読むとかなり楽しめるでしょう。

…と色々書きましたが、あれだけ幅広い内容を200頁に絞ってゆくのは並大抵のご苦労ではなかったでしょう。それを思うとたった1週間で読んでしまってその上ケチまで付けるのは心苦しくもあります。さとうさんとしても、ロシア気質では出版を引き受けてくれる所があるか不安だったので、焦点が絞られていないという批判を覚悟の上で、書ける時に書けるだけ書いておこうという苦渋の選択だったのだとお聞きしました。この『アヴォーシ』を見て「なんだ、これくらいなら俺も書いてやるぞ」、「私だってこんな経験したんだよ」と、ロシアに向き合って来られた方々が血の通った情報を発信してくれるようになるといいですね。

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